【タイ・海外進出】スポットコンサルの活用とヘルスケア市場での日本の強み

法規制・保険制度・倫理観：国ごとに違う常識

医療機器の販売を考える際、日本国内では医薬品医療機器等法（薬機法）に準拠していればスムーズに許可が下りる製品も、海外ではCEマーク、FDA承認、または現地独自の認可制度を別途クリアしなければ販売が認められないケースがあります。

さらに、国によっては公的保険制度の有無、対象範囲、民間医療の位置づけが全く異なり「どのような患者が、どういう理由で、どこに医療サービスを求めているか」という基本構造すら日本とは大きく異なるのです。

新興国では「制度があっても運用されていない」現実も

特に東南アジアや南アジアなどの新興国では、法制度自体は整備されていても、現場での運用が追いついていないということが少なくありません。

実際に医療機器を輸出したものの、現地での通関に想定外の時間がかかったり、登録手続きで追加書類が何度も求められたりといった、トラブルがよく発生しています。

さらに、言語や文化の違いも大きな壁です。医療分野は、単に製品やサービスを提供すれば終わりではなく、現地の医師や看護師、病院関係者との信頼関係構築が極めて重要になります。

成功の鍵は「専門知見を持つパートナー」との連携

こうした状況を乗り越えるために不可欠なのが、その分野に精通した専門家やローカルパートナーとの連携です。

• 医療機器認可のプロセスに精通した規制アドバイザー
• 現地医療機関の意思決定フローを理解する営業パートナー
• 文化的背景を踏まえた医療従事者との交渉支援者

このような存在がいるかどうかで、進出後のスピード感や信頼獲得のしやすさが大きく変わってきます。

医療やヘルスケア分野における海外進出は、成長市場への挑戦であると同時に、制度・文化・信頼形成という多層的な難しさを伴う事業でもあります。

一般的なビジネス経験だけでは見落とされがちなリスクを減らすためには、専門的知見を持つアドバイザーやローカルパートナーとの連携が、成功への不可欠な要素となるのです。

制度調査や交渉の初期段階では、スポットコンサルのような短時間で知見を得られる手段も、効率的かつ確実なスタートを切る選択肢として活用できます。

厳格な認可制度「TFDA」による販売ハードル

タイで医療機器を販売するには、TFDA（タイ食品医薬品局）による認証取得が必須です。

このプロセスは製品のリスク分類に応じて段階的に設定されており、クラス1（低リスク）からクラス4（高リスク）に分類される仕組みになっています。

申請には以下のような要件があります。

• 技術文書、試験データ、使用説明書（タイ語）の提出
• 製造元の品質マネジメント体制（ISO13485など）の証明

手続きは数ヶ月から1年程度かかる場合もあり、時間とコストを見込んだ計画が必要です。また、承認後のラベル表示・広告規制・流通管理にも遵守事項が多数あります。

参入成功の鍵は3つの現地戦略

制度的なハードルを乗り越えた後、市場に製品を浸透させるには、以下のような現地に最適化された戦略が欠かせません。

信頼ある現地ディストリビューターとの提携

タイでは医療機器の販売ルートが病院・クリニックとの密接な人脈で構築されているため、現地に精通したディストリビューターと組むことで、導入スピードと信用力が大きく向上します。

政府系医療機関と私立病院で求められる対応も異なるため、販売網の選定は慎重に行う必要があります。

病院での導入実績を積み重ねる

最初の導入が難しい分、実証導入（パイロット）によって実績を見せる戦略が効果的です。小規模な導入から始め、使用実績や臨床評価を得ることで、他施設への展開や入札参加がしやすくなります。

アフターサポート体制の整備

医療現場では機器の不具合やメンテナンス対応への信頼が非常に重要です。現地拠点やパートナー企業と連携し、タイ語対応・迅速な保守体制・技術者教育といったサポート体制を整備することで、長期的な関係構築が可能になります。

タイの医療機器市場は、成長性と制度的ハードルが並存する戦略的市場です。TFDA認可の取得を始めとする制度理解と、現地に合わせた販売・運用戦略が、事業成功の分岐点となります。

日本企業にとっては、高品質・高信頼性の製品と丁寧なアフターサービスを武器に、信頼できるパートナーとの連携と段階的な導入実績づくりを通じて、着実な市場浸透を目指すことが求められます。

高齢社会を迎えるタイと多様化するニーズ

これまでタイのヘルスケア市場といえば、都市部の私立病院や医療ツーリズムに注目が集まりがちでしたが、近年ではより身近な生活支援や介護、在宅リハビリといった地域密着型の支援領域に関心が高まっています。

特に地方では医療インフラの不足に加え、一人暮らしの高齢者や寝たきりの家族を抱える世帯が増えており、持続可能なサポート体制の構築が急務となっています。

日本企業の「信頼性」と「丁寧さ」が強みになる

日本のヘルスケアサービスは、安全性・信頼性・利用者視点の丁寧な対応で世界的に高い評価を受けています。

タイでも「日本製」や「日本式」というブランドは、高品質の象徴として受け入れられており、特に富裕層や都市部中間層を中心に人気があります。

このような市場環境では、価格だけでなく「安心感」といった価値重視型の提案が効果を発揮します。

実践的な進出戦略の例

タイ市場における進出戦略としては、以下のようなアプローチが現実的かつ有効です。

ローカル企業との協業モデル

現地の介護事業者や医療ベンチャーと連携し、機器・ノウハウ提供と現地運営を組み合わせたパートナーシップモデルを構築することで、コストとリスクを抑えながらスムーズな市場参入が可能です。

デジタルヘルス・遠隔医療との掛け合わせ

タイでは政府主導でデジタル医療インフラの整備が進められており、遠隔診療や健康管理アプリへの関心も高まっています。日本のセンシング技術やリモートケアのノウハウを組み合わせることで、効率的で信頼性の高いサービス提供が実現できます。

タイの医療・ヘルスケア市場は、高齢化と所得水準の上昇により、今後さらに成長が期待される分野です。

日本企業が進出するうえで、現地の制度や市場構造を深く理解し、自社の強みをどう活かすかが鍵となります。

そのためには、専門家の知見を柔軟に取り入れ、現地に根ざした戦略設計を行うことが重要です。

株式会社GlobeNexusでは、タイ市場に精通したプロフェッショナルによるスポットコンサルティングを提供しています。

規制調査からパートナー選定、参入戦略の立案まで、貴社の海外展開を力強くサポートします。