海外進出を助けるスポットコンサル｜フィリピンのビジネス規制対策とは？

政府主導で進む「イノベーション国家」構想

フィリピン政府は、2019年に施行された「フィリピン・イノベーション法」を皮切りに、技術革新とスタートアップ創出を国家の成長戦略の柱として位置づけています。

さらに、DOST（科学技術省）やDICT（情報通信技術省）を中心に、研究開発支援やインキュベーション施設の整備も推進されています。

これにより、外資企業にとっても大学・研究機関・スタートアップとの連携が現実的な選択肢となりつつあります。

注目される先端技術分野

現在フィリピンで特に注目されているのは、以下のような分野です。

AI（人工知能）

業務自動化や教育分野での活用が進行中

フィンテック

モバイル決済・マイクロファイナンスなど金融包摂への関心が高い

ヘルステック

遠隔医療や健康モニタリングは医療アクセスの地域格差是正に貢献

農業DX

農業従事者向けの気象予測・生産管理アプリの開発ニーズが顕在化

これらの領域では、社会課題の解決とビジネスを両立させるモデルが求められており、技術を実装する力が問われています。

外資企業に適した展開モデルとは？

先端技術をフィリピンで展開するには、単なる製品輸出ではなく、現地のエコシステムと連携した展開モデルが重要です。以下にその一例を紹介します。

大学・研究機関との共同研究・PoC（実証実験）

現地大学や技術機関と連携し、小規模な実証プロジェクトを通じて、市場ニーズや運用環境を検証します。PoCの結果を踏まえて製品仕様を調整したり、現地ユーザーの声を開発に反映させたりすることができます。

現地アクセラレーターと連携した事業拡大

フィリピンには「QBO Innovation Hub（クボ・イノベーション・ハブ）」や「IdeaSpace（アイデアスペース）」といったスタートアップ支援機関があり、こうしたアクセラレーターと協力することで、現地での販路構築や資金調達支援も受けやすくなります。

社会課題起点のソリューション提供

災害リスク、都市の交通混雑、地方の医療不足など、フィリピン独自の社会課題に技術で応えるアプローチは、政府や自治体からの協力も得やすく、事業の信頼性向上にもつながります。

ディープテックは、これらの社会課題に対して、従来技術では不可能だった解決策を提供する可能性を秘めています。

例えば、AIを活用した災害予測システムや、バイオテクノロジーを用いた医療診断技術など、社会課題解決に直結するディープテックソリューションは、フィリピン市場で大きな需要が見込まれます。

フィリピンのイノベーションエコシステムは、政策支援・若い技術人材・社会課題という3つの要素が融合する成長分野です。日本企業にとっては、技術を「売る」のではなく、「共創」や「現地適応」をキーワードにした戦略が求められます。

初期段階では、現地の制度や連携先の選定をスムーズに行うため、スポットコンサルなどを通じた情報収集や専門家との対話も、有効な選択肢となるでしょう。

英語対応・若手人材に強みを持つフィリピン

フィリピンのIT・エンジニア人材の最大の特徴は、高い英語運用能力と若手比率の高さにあります。大学のIT系学科を卒業した新卒層が豊富で、プログラミングやUI/UX設計に長けた人材が多く育成されているのが特徴です。

また、オフショア開発やBPO（ビジネス・プロセス・アウトソーシング）の分野ではすでに実績があり、特に米国・欧州企業との協業経験を持つ人材が多いため、海外とのプロジェクト運用に慣れている点も強みです。

効果的な協働モデルの具体例

フィリピン人材を最大限に活かすには「発注」ではなくパートナーシップ型の協働体制を構築することがポイントです。以下に、協働モデルの例を紹介します。

教育支援型の長期人材戦略

自社の開発文化に合った人材を継続的に確保するには、インターンの受け入れや教育支援を通じた人材育成が効果的です。ロイヤルティの高い人材を長期的に育成・定着させることで、チームの安定性と生産性向上が期待できます。

現地法人を活用した現地主導型SaaS開発

受託開発だけでなく、フィリピンに法人を設け、現地メンバーを中心にプロダクト開発を主導するモデルも注目されています。市場ニーズへの即応性や、ローカル発のグローバル展開にも対応しやすい体制です。

フィリピンのIT人材は、英語力、技術力、そしてコスト競争力の三拍子がそろった、企業にとって非常に価値のあるリソースです。日本企業が一方的に開発を委託するのではなく、協働パートナーとして信頼関係を築くアプローチが、持続的な成果を生む鍵となります。

その第一歩として、現地の人材市場やパートナー候補を見極めるために、スポットコンサルを活用してリアルな情報を得るのも効果的な方法です。

外資企業に関わる基本制度

フィリピンでは、外資企業に対する優遇制度や規制が明確に区分されています。進出を検討する際には、以下の3点をしっかりと把握することが重要です。

PEZA登録による優遇措置

PEZA（Philippine Economic Zone Authority）は、経済特区への進出企業に対して、法人税の減免や輸出手続きの簡素化といったインセンティブを提供します。製造業やITサービス業などが対象で、輸出比率の高い企業にとってはコスト面で大きなメリットがあります。

業種による外資規制の違い

100％外資で進出可能な業種（製造・IT・BPOなど）もあれば、一定割合以上の現地資本が求められる業種（小売業、土地取引、不動産開発など）も存在します。これは「ネガティブリスト」と呼ばれる制度に基づき、定期的に内容が更新されています。

税務・雇用制度の特徴

フィリピンでは源泉徴収税の範囲が広く、雇用契約や退職金制度にも独自ルールがあります。契約社員と正社員では労働保護のレベルが異なり、解雇時の手続きや費用も要注意ポイントです。

実務上の対応戦略と落とし穴の回避法

制度の理解だけでなく、進出後の運用やトラブル回避のための準備も欠かせません。

現地法律事務所・コンサルとの連携

法規制は定期的に変更されるため、信頼できる現地専門家との継続的な連携がリスク回避に直結します。特にライセンス取得、税務申告、人事規定の作成などは、経験豊富なローカルの支援があるとスムーズです。

スポットコンサルでピンポイント確認

本格的な契約前や制度選定時に、スポットコンサルを通じて短時間で専門家に確認する方法も有効です。これにより、思わぬ「見落とし」や「想定外の条件変更」を回避できます。

進出形態に応じた制度の選択

フィリピンでは、支店・子会社・合弁会社など複数の進出形態が可能です。それぞれに税務・資本要件・収益分配のルールが異なるため、目的や事業スキームに応じた最適な形態の選定が重要です。

フィリピンは外資に開かれた国でありながら、分野別の規制や制度運用の複雑さに対応する姿勢が求められる市場でもあります。進出の成功には、単に制度を理解するだけでなく、現地の専門家やスポットコンサルを活用した実践的な準備と判断が欠かせません。

事前準備の質が、その後の事業展開の滑らかさを決定づける、という視点を持って、慎重かつ前向きに進出戦略を立てていきましょう。

株式会社GlobeNexusでは、フィリピン市場に精通した専門家とのスポットコンサルティングを通じ、現地戦略構築を支援しています。最新トレンドの把握から制度対応、現地パートナーとの連携まで、まずはお気軽にご相談ください。